月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】リモートワークで増えた対話機会 社員間の理解が深まり関係性も向上

2020-09-11 18:14

ビジネス領域で国内最大級のナレッジプラットフォームを運営している株式会社ビザスク。2020年3月、東証マザーズに上場後、ほどなくしてフルリモートワーク体制に突入。慣れない業務も多い中、ITツールを使うことで、逆にコミュニケーションは活性化。現在、リモートとオフィス、どちらも選べる勤務スタイルを継続している。

取材・文◎石田ゆう子

ノートPCやチャットなど慣れたツールでリモートへ

 「知見と、挑戦をつなぐ」をミッションに、ビジネス知見を有するアドバイザーと、それを求める企業などをマッチングする、ナレッジプラットフォームを提供している同社。メイン事業は、スポットコンサル(1時間インタビュー)という短時間取り引き。「たとえば、総務の人なら、総務の仕事をしてきた中で培ってきた知見がある。そうした知見を持つ人にアドバイザーとして登録してもらい、それを必要とする人たちに1時間Web・電話・対面で知見を提供していただくサービスです」と、コーポレートグループの原圭佑さんは話す。
 2020年3月10日、東証マザーズに上場。3月26日、全社フルリモートワーク体制に。緊急事態宣言発令前に実施したのは、「社員の安全が優先」との経営の判断だった。
 元々、リモートワークの制度は申請制で導入しており、上司に事前に報告すれば誰でも使える。ノートPCは1人1台貸与。書類の電子化も進んでおり、通信環境も含めて、どこでも仕事ができる最低限のインフラは整っていた。「ただ、対面で顔を合わせることによって起きる化学反応や、ちょっとした雑談から生まれるビジネスのアイデアもある。会社としては、原則、出社してもらう方がいいよね、というのがコロナ前の考えでした」。
 一方、営業などは、普段からノートPCを持ち歩き、1日中外で仕事をしていることもあった。また、以前から、Slackなどのチャットツールを使っており、事業のスポットコンサルでは、Web会議システム「Zoom」を活用していた。そうしたツールに慣れていたこともあり、リモートワークに入ることに社員の抵抗感はなかった。

自宅のインフラ支援に注力。在宅勤務の手当も拡充

 それでも、自宅のインフラには個人差があり、そこは、柔軟かつ迅速な対応が求められた。「自宅にもモニターがほしいとの声が多く、会社にあったものや、新たに購入して、30-40台は送りました」。必要な人にはモバイルルーターも手配。また、入社式もZoomで実施し、新入社員研修もオンラインで行った。
 リモートワークをする上で配慮したのは、労務担当やチームリーダーが勤務時間をチェックし、働きすぎを防ぐようにすること。また、手当面での補塡も行った。「お子さんがいて対応が必要な社員などには有給での時短勤務を認めました。その分、それ以外のメンバーに業務のしわ寄せがいってしまう可能性もゼロではないので、みなし残業時間とする枠を下げて貢献に報いるといった対応をしました」。
 さらに、以前から福利厚生の一つに、全社員が使える家事代行サービスがあった。上限は月に2回だが、在宅で家が汚れる、子供もいながらの仕事で手が回らないといった状況にあって、掃除や料理を代行してもらえる制度は好評だ。

株主総会の準備も基本はリモートで対応

 上場後、初の株主総会は、オフィス内を会場に実施した。準備は、IR支援会社のシステムも使いつつ、すべてリモートで進めた。「株主の方には、こういった状況なので来場はお控えください、と。その代わり、当日のようすを動画で配信させていただくので、そちらをご覧ください、という形で開催しました」。社外役員には、オンラインで参加していただき、その場にいたのは、社内取締役と監査役、事務局のみ。株主からは事前に議決権を行使してもらい、無事に終えることができた。
 いわゆる「ハンコ問題」については、ちょうど、電子署名システムを導入し、印章管理規程も変えたところだった。しかし、まだ導入過程だった
ため、印影をデータ化して、PDF上で押印するなどの対応をした。
 公開会社としての初の本決算や、有価証券報告書の作成も、経理部門が中心に、チャットや電話で相談しながらリモートで行った。「オフィスなら隣にいる人にすぐに聞けるのに、といったもどかしさはありましたが、やればできるもんだな、と。請求書など、物理的に送られてくるものもあるので、その処理は、会社に来てしなければいけないのですが、基本、出社せずに、ほとんどの業務ができました」。

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リモートで逆に会話が増え多様な働き方への理解も

 社員からも、「意外とオフィスじゃなくても働ける」との感想が多かった。1人でいることの寂しさも、チャットなどでつながっているので感じなかった。元々は「顔を合わせて」が原則の同社だが、いざやってみると、Web会議の頻度が増えたり、朝会を行うなど、むしろ顔を合わせていないからこそ会話が増えた。チャット上には雑談用のルームができるなど、コミュニケーションの幅が広がった。「Web会議中にお子さんが映り込むといったようすを見て、育児しながら働くことの大変さを独身の人が感じ取ることもあり、お互いの理解が深まった一面がすごくありました。大切なのはコミュニケーションなのだと、あらためて思いました」。
 緊急事態宣言解除後は、一度、原則出社に戻した。その際には、全体を2班に分けて隔日で出社。固定席を急きょフリーアドレスにし、隣とは一定の距離を空けるという決まりを作った。現在は、リモートとオフィス、どちらでワークしてもいいというスタイルを取っている(7月現在)。「家族に年配者がいるなど、リスクを考えて家で働きたいという人もいれば、可能ならオフィスで働きたいという人もいる。フレキシブルに働けるようにしておくことがいいのかな、と思っています」。 
 管理部門の知見というのは、本人たちが思っている以上に、会社を回していく上で重要だ。今回のように特殊な状況でも柔軟に回していける方法など、「読者の方にも当社のサービスを通じて知見を提供していただけたら」と、原さんは話す。一層の活躍に期待したい。


【会社DATA】
株式会社ビザスク
本社:東京都目黒区青葉台4-7-7 住友不動産青葉台ヒルズ10F
創業:2012年3月
代表者:代表取締役CEO 端羽英子
資本金:3億7,026万124円
従業員数:120人(2020年5月現在)
https://visasq.co.jp/


株式会社ビザスク
コーポレートグループ
原 圭佑さん
はら・けいすけ●2019年中途入社。現在、株主総会実務を中心に、総務、経理、法務を担当。趣味はロードバイク。このコロナ禍では自転車通勤も。オフは、家の中でバーチャルな景色が映る機械を取り付けて走っている。「自由に行き来できるようになったら、ずっと憧れている沖縄のレースに出てみたいです」。