月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】健康支援と働き方改革を両輪に 「KAITEKI健康経営」を実行中

2020-10-13 10:21

総合化学メーカーの三菱ケミカル株式会社。2016年、親会社の三菱ケミカルホールディングスとともに「KAITEKI健康経営」をスタート。さまざまな施策に取り組む中、その内容を"「三菱ケミカルは決めました」30の宣言"として社内外に広く発信。健康支援と働き方改革を両輪に、多様な人材がいきいきと活力高く働ける職場作りを進めている。

取材・文◎石田ゆう子

自律と協力がポイント。自分も職場も家族も健康に

 2017年4月、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの3社が統合して誕生した同社。その前年に始まった「KAITEKI健康経営」は、三菱ケミカルホールディングスグループが掲げるビジョン「KAITEKI(人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと)実現」のための取り組みの一つ。「KAITEKIを実現するには、まずは企業体そのものが、それを構成する従業員が健康でなければいけない。そのために、働く人の活躍を最大化し、多様な人材がいきいきと活力高く働ける会社・職場を作ろう、との考えから取り組みをスタートしました」と、執行役員 人事部長の金丸光一郎さんは話す。
 特徴は、「健康支援」と「働き方改革」を両輪に、自分の健康、職場の健康、家族や地域の健康、と3つの視点から施策を実行していること。「一人ひとりが自律的に健康に気を使いながら、お互いの協力によって活力ある健康な職場を作っていく。特に、メンタルヘルスの不調には職場の協力や家族の協力が必要です。働き方改革も、一人で行える効率化は知れている。お互いに協力して、仕事のやり方そのものを大きく変えていく。それが、会社のバリューを生み出す源泉になっていく。健康経営は、まさに経営戦略の一環です」(金丸さん)。

あえて生産性や創造性とは切り離したKPIを設定

 KPIには、いきいき活力指数、働き方指数、健康指数の3つを設定。年に2回、常務以上が集まる会議で振り返り、傾向と対策を話し合っている。「一般的に、健康経営のゴールは、創造性や生産性の向上と定義されますが、それだと世界の経済状況などによって変動してしまうことがある。そこで、私たちは、あえてそことは切り離し、定性的でもいいから、健康であること、働き方がいいこと、いきいきと活力を持って働いていることを可視化し、KPIにしました」と、人事部 全社統括産業医の真鍋憲幸さんは説明する。
 たとえば、健康指数は、健康診断などから導き出される数字のデータと、従業員個人が、睡眠や運動などについて意識変容、行動変容をアンケート方式で答えたものを組み合わせた。血圧が良ければ1点、運動ができたら1点というように加点方式にしている。「ただし、これらの指数は社内のトレンドを見るものであって、他社と比較するものではありません。外部評価は、健康経営銘柄や、ホワイト500というもので測りながら、自分たちが『取り組んだ』『がんばったよね』ということがわかるようなKPIになっています」(真鍋さん)。

会社の本気が伝わる"30の宣言"を発表

 2019年、健康経営の取り組みを"「三菱ケミカルは決めました」30の宣言"として発表した。ねらいは、従業員へのさらなる浸透だ。「面談や幹部との対話会、労働組合等を通じて社員の意見を聞くと、すでに行っていたり、始めようとしていた制度が多かった。また、キャリア採用の社員からは、いい制度があるのに知られていないといった声があり、会社の施策が従業員に広く浸透していないことに課題を感じていたことから、あらためて施策や制度を体系化し30の宣言という形で伝えることにしました」(金丸さん)。
 30の宣言は、従業員にはわかりやすく、管理職にとっては、この方針にのっとってやるのだな、と覚悟を決めてもらえるよう、いい切りの形に。さらに、どの宣言も、主語は、「会社は」として受け止めることができる表現になっている。「従業員に求めるばかりではなく、会社はこういうプラットフォームを用意しますので、みんなはいきいきと働いてくださいね、と。従業員からは、非常に好評です」(真鍋さん)。なにより、宣言を出すにあたっては、経営と何度も議論した。経営がその重要性を理解してくれているのは大きい。
 宣言は続々と実行されている。「職場での受動喫煙防止対策を徹底します」は、この4月から、就業時間中は全事業所で禁煙にし、徹底している。「製造現場のトイレ環境を改善します」では、「爽快プロジェクト」を立ち上げ、十分な予算をかけて順次、工事を進めていく計画だ。

fig_soumu11.jpg

「気付けばやれていた」という健康経営を目指す

 現在も社内向けポータルサイトや、社外メディアも積極的に活用し、活動の周知徹底に力を注ぐ。最近は、労働組合ともタイアップ。組合でも浸透をはかってもらいながら、従業員の声を聞いてもらって事務局と共有。そこから、さらなる健康経営の推進につなげたいと考えている。
 直接の声ではないが、エンゲージメントサーベイのウェルビーイングの点数が突出して高かったことから、従業員に、健康経営の取り組みが認知されてきていることは間違いない。また、同社では健康サーベイ、働き方改革のアンケートも取っており、AIの力も借りてこの2つをクロス分析。そこに、エンゲージメントサーベイの結果を合わせて、検証することも始めている。結果のいい職場は、ロールモデルとして横展開。逆にうまくいっていないところは、その職場にはどういう課題があるのかを分析する。そうしたことにもこれから取り組んでいく。
 目の前の課題としては、やはり、コロナ対策がある。「製造現場では、検温や、2週間の行動記録の提出などを、強制ではありませんが、協力会社さんにもお願いしています。嫌だと思う人もいらっしゃるかもしれませんが、三菱ケミカルがそれを求める会社だと思えば、普段の生活から意識してくれるのではないか、と。知らないうちに自然とうまくいっている状態が、私たちが目指す健康経営。気が付かないうちに減塩していた、歩いていた、感染予防をしていた、となるような仕掛け作りに、今後も取り組んでいきます」(真鍋さん)。
 「健康経営は、終わりのない取り組みです。改善していった先にはもっといい状態がある。30の宣言もこれで完成ではなく、必要なものは加えるし、できたものはなくしていい。早く『できました!』という宣言をしたいですね」(金丸さん)

※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。


【会社DATA】
三菱ケミカル株式会社
■本社:東京都千代田区丸の内1-1-1 パレスビル
■創業:1933年8月31日
■発足:2017年4月1日
■代表者:代表取締役社長 和賀昌之
■資本金:532億2,900万円
■従業員数:4万776人(連結:2020年3月末現在)
https://www.m-chemical.co.jp/


三菱ケミカル株式会社
執行役員 人事部長 金丸光一郎さん(右)
人事部 全社統括産業医 真鍋憲幸さん(左)
かねまる・こういちろう●1987年入社。ほぼ一貫して人事業務に従事。2017年4月より現職。テレワーク続きで運動不足となり、健康管理の大切さを痛感しているところ。「ただ、飲みに行く時間は激減したので、その分、ほかのことができるようになりました」。
まなべ・のりゆき●産業医科大学卒、泌尿器科医の臨床を経て2005年入社。2017年より現職。このコロナ禍でウェブ飲み会を経験。自分の話の長さを実感することに。一方で、「あまり話をしたことがなかった人の考えを知る良いきっかけにもなっています」。