月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】オンラインだからこそ実現できたコミュニケーション施策とCSR活動

2021-06-14 11:42

株式会社バンダイナムコホールディングスのグループ会社で、「機動戦士ガンダム」などのアニメーションを中心に手掛ける映像製作会社、株式会社サンライズ。2020年、学校にいながらアニメーション制作の現場に触れられる「企業訪問オンライン」や、社内向けのファミリーイベントをオンラインで開催。コロナ禍だからこそ、新しい施策に挑戦している。

取材・文◎石田ゆう子

コロナ禍で気付かされたオンラインという選択肢

 「ゼロからイチを生み出す企業」を企業理念に、「ガンダム」シリーズや「ラブライブ!」シリーズなど、バンダイナムコグループの源となるオリジナル作品を生み出し続けている同社。「アニメーション制作は、クリエイターが紙に描いたものを集めて作る、というところがあるので、完全在宅は難しい。それでもシフトを工夫して、現在、3割の出社率でやっています」と、管理本部 経営企画室兼 総務部ゼネラルマネージャーの吉田英明さんは話す。社員と同時にクリエイターの在宅勤務も進めていくと、「自宅で自由な時間に描けるのがいい」との好反応も。今後の働き方に、在宅といういい選択肢が増えた、と前向きに捉えている。
 そうした中、2020年11月3日、社員とその家族を対象にしたファミリーイベントを、ビデオ会議サービス「Microsoft Teams」(以下、Teams)を使ったオンラインで開催。「当社は多くの制作スタジオが点在しているため、1か所に集まってのファミリーイベントが物理的にきなかった。それが今回、みんながオンラインに慣れてきたので初めて実施できました」。

子にも親にも喜ばれた初のファミリーイベント

 プロジェクトは、経営企画室の5人によって2020年7月頃から始動。他社事例がほとんど見当たらない中、Teamsの機能を調べては作り、と、手探り状態で進めていった。
 当日は、ほかの管理本部の人にも入ってもらい、15人ほどで運営。午後1時から4時まで、事前登録制のイベントを4本、各40分6回実施。そのほか、いつでも入れる自由参加のプログラムを用意した。「事前登録イベントは、当日の参加人数の把握のほか、ワクワク感を高められたら、との思いがありました。それぞれ参加人数は20人ほど。双方向で行うにはちょうどいい人数でした」。たとえば、「初心者向けガンプラ体験会」は、あらかじめプラモデルを送っておき、当日、一緒に作れるようにした。オンライン画面に司会者が大きく、参加者が小さく映っている状態で、司会者が作り方を説明したり、ようすを見ながら参加者に声を掛けたり。教室として、オンラインでもうまく機能したという。
 また、「パラパラマンガ教室」は、同社のグループ会社のSUNRISE BEYOND取締役で、監督やアニメーターとしても活躍する羽原信義さんが講師となって、実際に絵を描いて見せながら、わかりやすくパラパラマンガの描き方を教えるもの。「アイカツ! ダンスパーティー」は、アイドル系アニメ作品「アイカツ!」のダンスを、社員自らがアレンジを加えながら指導した。中でも好評だったのが、実際の職場を紹介した「わくわくアニメ探検隊」だ。「社員の了承を得てデスクを映したのですが、家族の写真が飾ってあるのを見てお子さんが喜んでくれた、と。それを見た社員自身もうれしかったようです」。
 自由参加イベントでは、役員のオフショット動画を配信したり、事前に募集したお子さんの絵を発表したり。オンライン謎解きゲームや、くじ引き抽選大会も行った。
 ファミリーイベント全体の参加者は、家族と合わせておよそ150人。「子供が喜んでくれた」との感想が多く、評判を聞いた社員から「参加したかった」の声も広がり、今年も7月に内容を変えて実施することが決定。「この先は本社移転が決まっており、創業以来、初めて全員が同じビルに集まる。いずれはリアルでもやりたいですね」。

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「企業訪問オンライン」には約100人の生徒が参加

 一方、2020年11月には、全国の小中高を対象に、学校からオンラインで参加できる学習プログラム「企業訪問オンライン」を開始。同社ではかねてより、CSR活動の一環として、小中学校の企業訪問学習の受け入れをしていたが、コロナ禍で休止になっていた。メンバーからオンラインでの開催の提案があり、リアル開催より人数が受け入れられる利点もあって実施を決定。「募集開始が9月だったので年間計画に組み込めない学校も多かったと思いますが、それでも2020年は約100人に参加していただきました」。
 プログラムは1時間程度。アニメーションができるまでの冊子や、実際に使っている用紙などを入れたキットを事前に送付し、それを基にした学習や質問コーナーを設けて、リアルなコミュニケーション体験を大切にした。「当日は、現場のプロデューサーや制作デスクなども参加。生徒さんからすれば、自分が見ているアニメを作っている人が回答してくれる。そんな臨場感が好評でした」。
 現場からしても、視聴ターゲットである生徒さんの意見が聞ける機会は貴重だ。「こういう作品、どうですか?」と、逆に質問を考えてくる社員もいる。リアルのときには現場が忙しくて参加しづらかったが、オンラインなら参加できる、となった向きもある。「現場も参加すること自体、楽しいようで、頼むとほぼ『やりたい』といってくれる。私たちも生徒さんとの交流にほっこりします」。

今後は、状況と特性を見てリアルとオンラインを併用

 ほかの施策でも、オンラインという選択肢が増えたことは大きかった。
 たとえば、以前は毎月、社員をランダムに10人ほど選んで、役員と食事会をするというコミュニケーションの場を設けていた。それを今は、「オンラインお茶会」という形で行っている。また、社員が講師になっての月1の研修も、リアルのときは、参加者20人くらいで質問も少なかったが、オンラインでは参加者が4、50人に増え、質問もチャットだとたくさん出るという。「オンラインの方が良いもの、リアルの方が良いものが、この1年で見えてきました。とはいえ、自分としてはリアルで集まって、というものはやりたい。今後については、企業訪問もファミリーイベントも、オンラインとリアルを併用して行っていきたいと考えています」。


【会社DATA】
株式会社サンライズ
本社:東京都杉並区上井草2-44-10
設立:1976年11月
代表者:代表取締役社長 浅沼 誠
資本金:3億円
従業員数:293人(2021年4月1日現在)
https://www.sunrise-inc.co.jp


株式会社サンライズ
管理本部 経営企画室 ゼネラルマネージャー 兼 総務部 ゼネラルマネージャー
吉田英明さん
よしだ・ひであき●1999年バンダイ入社。2005年バンダイとナムコの統合によりバンダイナムコホールディングスに異動。2016年サンライズ、経営企画室に出向。2021年より総務部兼任。「休日はホームパーティーや、理系出身なので、理系脳が使えるブロック組み立てを楽しんでいます」。