月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】リモートとオフィスの利点を融合。「ハイブリッドワークモデル」の実現へ

2020-11-13 15:08

社会人向けオンライン生放送学習コミュニティ「Schoo(スクー)」を運営する株式会社Schoo。同社では、リモートとオフィス双方の利点を融合した「ハイブリッドワークモデル」の確立に向けて、仕組みや制度の整備に着手。同時にリブランディングを実施し、場所ではなく、理念でつながるアフターコロナの働き方の実現に取り組んでいる。

取材・文◎石田ゆう子

「一生、学べる学校」をインターネット上で公開

 2012年のサービス開始以来、幅広い授業を、毎日無料で生放送している同社。個人向けサービスでは、現在、6,500本の録画授業を公開。法人向けサービスでは、企業ニーズに合わせて厳選した5,500本の学びを提供している。「コロナ禍で着目されるようになった双方向のオンライン授業をいち早く取り入れてきた会社です。今回のことで『オンライン教育は、やってみると意外にいいね』と、お問い合わせも非常に増えています」と、執行役員CFOの中西勇介さんは話す。
 同社自身の新型コロナウイルス感染症対応としては、社員の健康と生命を第一に取り組んできた。現在も基本はリモートワークとし、緊急事態宣言中は、生放送授業も遠隔で行った。オンライン学習を事業にしている会社だけに、リモートワークに抵抗感はないが、やはり、郵便物対応や押印などの内勤業務が課題に。「また、営業がリモートで成果が出るのかも議論になりました。ただ、お客さまも、来てほしいとはいえない状況となり、影響はなかった。現在もフルリモートで商談をしていますが、獲得効率は落ちていません」。

"リモート×オフィス"のハイブリッドワークモデル

 5月には、アフターコロナの働き方として、リモート(自宅やカフェなど)でも、オフィス(ほかワークスペースなど)でも働ける「ハイブリッドワークモデル」の確立を目指すとの方針を掲げた。「ベースにはABWの考え方があります。オフィスか在宅かの二者択一ではなく、双方の利点から役割を分けて、仕事の生産性と快適性を追求していこうと。今、そのための仕組みや制度を考えているところです」。
 すでに実施中なのは、リモートワーク補助。インターネット通信費や、在宅勤務に必要不可欠な机、椅子などの購入費補助を行っている。また、通勤費をなくし、代わりにリモート手当を支給。オフィスは縮小せず、採用を増やしている中で増床しないことでコスト削減につなげる考えだ。
 課題は、コミュニケーション不足による微妙なすれ違い。「意外と雑談が大切で、雑談の中でコミュニケーションを取って、目に見えない信頼残高を積んでいる。ですので、週に2回まで、一度に最大20人まで出社可能というルールを設定。部門単位、あるいはレイヤー単位で調整し合って同日に出社し、リモートだけでは難しい相談やブレストなどを行うようにしました」。
 オフィスは、知的創造の場、フェース・ツー・フェースでしかできないことをするコラボレーションの場と位置付けた。今後はミーティングスペースを広くし、フリーアドレス化を進めていく予定だ。

業務時間内の「班活動」でコミュニケーションが向上

 コミュニケーション施策で好評なのが「班活動」だ。これは、業務でかかわりのない人たちを3人のグループにして、週に1回30分、1つのテーマで議論をしてもらう活動。メンバーの組み合わせは、総務人事の方で決め、4週をワンクールとして回している。「縦糸、横糸、斜め糸がしっかりそろっている布って丈夫じゃないですか。組織も同じ。斜めのところを通すように、強制的に結び付ける。特に、コロナ禍で入社して一度も会っていない人もいますから、無理やりつなげて、コミュニケーションを取ってもらって、信頼残高を増やしてもらう。ポイントは、業務時間内に行うこと。飲み会の場合、逆に話さない人もいますし、プライベートに踏み込まれたくない人も多いですから」。
 班活動は、従業員の満足度調査で5点満点中、4.5を超えている。むしろ、オンラインでこそ効果が上がった施策だという。「ぜひ、他社さんにもやっていただきたいです」。
 逆に、難しかったのは、新卒を含めた新戦力のキャッチアップ。リモートではOJTとはいかない。そこで、業務を教わる先輩以外に、何でも相談できる先輩を付けるダブルメンター制度を導入した。新人の孤立を防ぐとともに、2人の先輩の意見を取り入れることでキャッチアップを早くした。新人からは、「あれがなかったら心が折れていたかもしれない」との声も上がっており、効果を実感している。
 もう一つ、問題となったのは、リモートでのマネジメントだ。悩みつつも行き着いたのは、当たり前のことを当たり前にできるマネジャー。メンバーへの仕事の指示は、内容、目的、優先順位などを明確にする。中間点での報告をしっかりしてもらう。それをPDCAで回す。「当たり前のようですが、今は、背中で見せるマネジャーというのは通用しない。全社に啓発しています」。

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リブランディングも実施。会社の軸を場所から理念に

 ほか、DXの推進を加速し、データはクラウドに上げておくことでBCPを強化する、リモートを前提とした地方在住者も受け入れて、優秀な人材を採用しやすくする、など、さまざまな施策を実行中。「今後は、リモートでは見えづらい行動評価が入っている評価体系を見直したい。まずは人事ポリシーを明文化し、全社の共通認識としていかなくてはと思っているところです」。
 オフラインゆえの課題への対応も急ぐ。たとえば、リモートの孤独感から起きるメンタル不調のケアや、新社会人のリテラシー向上、企業理念の浸透も重要だ。「対応策の一つとしてリブランディングを実施。新しいブランドブックを8月に公開しました。これまでは、オフィスという場所が働く人たちを一つに束ねていましたが、リモートで解放された今、それに代わるものは理念だと思っています。ただ、理念を体現している人を近くで見られない。言葉にした人の熱意を体感できない中での理念浸透は、本当に難しい。今、社内広報とも話し合いながら進めているところです」。
 成果が出れば他社のベンチマークになる。ぜひいい報告を期待したい。


株式会社Schoo(スクー)
本社:東京都渋谷区鶯谷町2-7 エクセルビル4階
設立:2011年10月3日
代表者:代表取締役社長CEO 森 健志郎
資本金:8億1,300万円(資本準備金含む)
従業員数:70人
https://schoo.jp/


株式会社Schoo(スクー)
執行役員CFO
中西勇介さん
なかにし・ゆうすけ●総合日用品メーカーでの経営管理や、地方銀行での融資業務などを経て、2020年7月中途入社。それ以前より同社の事業運営に携わり、新型コロナ対策にも従事。趣味は筋トレ。ボディービル大会にも出場。体重65kgで「ベンチプレス130kgは上げられます」。