月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
働き方変革をさらに前進させる「退社時間の見える化カード」

2017-04-13 10:06

業界トップクラスのトータルソリューションプロバイダー、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社。2014年、朝型勤務を本格導入したのを皮切りに、さまざまな施策によって「働き方変革」を推進している。その一環として、昨年11月、「退社時間の見える化カード」を導入。あえてアナログ的な施策を取り入れた背景や、その効果をうかがった。

 

取材・文◎石田ゆう子

退社時間の共有によってコミュニケーションが活性

 社員が働きがいを持って効率的、効果的に働けるよう、「働き方変革」を推進している同社。変革をさらに進めるために、2016年11月、退社の予定時間を周囲と共有できる「退社時間の見える化カード」を導入。これは毎日、社員一人ひとりが、当日の退社予定時間を表示したカードを自席のモニターの上に立てるというもの。「もちろん、ウェブの勤怠管理システムで、残業時間などの管理はしています。ですが、それだと上司と本人しか把握できない。それをオープンにして周囲も把握できるようにしよう。また、実は連日、遅くまで残業している実態が浮き彫りになることもあるかもしれない。そんな意図もあって、アナログ的なやり方ですが、あえて導入しました」と、人事部部長の次藤智志さんは説明する。「自分で退社時間を宣言するイメージです。出社したらカードを立てる。『今日は何時に帰る』と宣言したからには、その時間までには帰ろうとする。周りもわかっていてくれるので、余計なことを気にせずに済みます」と話すのは、同部労務課課長の中尾征人さん。
 
 たとえば、上司が部下に仕事の依頼をするにも、退社時間がわかっていれば、依頼のタイミングや納期にも配慮するようになる。また、中堅社員などは、定時で帰ろうと仕事をうまく進めていると、「ちょっと相談を……」と後輩から持ち掛けられ、結局、帰れなかったというのはよくある話。「それが今は、カードを見て、今日は一七時半に帰るのですね。では明日、お時間をもらえますか?といったコミュニケーションになっています」(中尾さん)。
 

部署ごとの繁忙状態も色分けカードで一目瞭然

ctc01.jpg

 注目は、退社予定の時間帯によって、カードが色分けされていること。標準の「17時30分までに帰る」カードは青。それより早い時間帯は、緑。それより遅い時間帯は、オレンジや赤。22時以降は紫、といった具合だ。「フロアを見渡せば、カードがずらっと並んでいる。これなら一目瞭然。誰が何時に帰るかだけでなく、赤が多い部署は忙しい、紫が多いと完全に危険状態だ、ということがわかります」(次藤さん)。また、あえてかわいらしいクマのデザインを採用し、時間帯によって笑顔だったり、悲愴感が漂う表情にしているのもわかりやすい。「基本、22時以降の残業は禁止です。翌日の早朝時間帯の勤務を奨励しています。どうしてもやらなければならない場合は、担当役員まで承認を受ける。あえてそこまでハードルを高くして、意識改革から取り組んでいます」(中尾さん)。
 
 朝型勤務の奨励を始めた当初は、社長と人事部長が、夜20時ごろになるとオフィスを見回ることもした。トップ自らが動くことで、経営の本気さを伝えた。全社的な平均残業時間は10時間以上削減された。「しかし、まだ特定の人に仕事が偏在しているのも事実。それもこのカードで目に見えるようになれば、改善していけるのではないか、と。今、当社のキーワードは自律と協働です。自ら考えて進めていく働き方も大切にしながら、サポート精神も大切にする。実際、遅い時間のカードが立っていたら、『大丈夫?』と協力し合うようになってきています」(次藤さん)。
 

会社の本気度は伝えつつ、無理はさせない働き方変革

 「働き方変革」をさらに進めるために、「少しでもいいものがあったら、できることは何でもやってみよう」とのトップの言葉を受け、スタッフ部門が話し合って考え出したこの施策。「こだわったのは、ある程度コストをかけてクオリティーの高いものを作ること。会社の本気度を伝えるためには、そこは重要です」(次藤さん)。専用ケースに入ったカードはポリプロピレン製。一人に1セットずつ、派遣社員にも配布している。使ってもらえるかが唯一の不安だったが、問題なく、みんなが使っている。「働き方変革に関しては、社員が反感を持つような、強引なことはしない。ただし、やれることは何でもやってみる。トライ・アンド・エラーの精神で取り組んでいます」(次藤さん)。このカードにも、「残業の削減を」と社員を厳しく管理するだけでなく、もっと社員が働きやすい環境を整備していこう、との会社の思いが込められている。とはいえ、「夜の時間帯の方が効率は上がる」という社員もいた。それでも結果的には、「自分の方が変わらなくては」と納得してもらえた。その背景には、経営が伝え続けてきたメッセージもあった。「長時間労働を減らして勤務の時間帯を朝に寄せていく。それ以前に、9時から17時半で終わらせると考えてみる。そういうことが、業務の効率化やワーク・ライフ・バランスはもちろん、おのずと健康にもつながっていく。そうしたメッセージは、ずっと発信し続けています」(中尾さん)。
 

プレミアムフライデーは働き方変革チャレンジデー

 朝早く来ることで、早く帰れる社員も出てきた。そうした社員の声を反映し、就業時間帯の繰り上げ、繰り下げを可能にする「スライドワーク」や、一時間単位で有休が取得できる「時間単位有休」も導入した。また昨年11月には、タッチダウンオフィスを開設。これは経費精算などのためだけに会社に戻らなくても済むよう、ターミナル駅のレンタルオフィスに、PCなどの環境を整えたもの。在宅勤務も適用要件を緩和した。このように働き方の選択肢を増やすことで、着実に残業は減少。同時に会社の業績も伸びているという。
 
 今後の取り組みとしては、月1回のプレミアムフライデーを「働き方変革チャレンジデー」と位置付け、遅くとも一五時退社を推奨していく。「これにも、退社時間見える化カードを活用し、『一五時までに帰ります』『午後休を取ります』と宣言してもらえたら、と。ほかにも使えそうなものが用意できないか、考えていきます」(中尾さん)。
 
※『月刊総務』2017年5月号P42-43より
 

【会社DATA】

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
本社:東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル
創立:1972年4月1日
代表者:代表取締役社長 菊地 哲
資本金:217億6300万円
従業員数:4029人(CTCグループ : 8303人/2016年4月1日現在)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
人事総務室 人事部 部長 次藤智志さん(右)
人事総務室 人事部 労務課 課長 中尾征人さん(左)
じとうさとし●2001年中途入社。グループ会社での人事部長を経て2016年4月より現職。趣味は再開したゴルフとカラオケ。「今の課題曲は、映画『君の名は。』の主題歌、前前前世です!」。その美声は社内の館内放送でも発揮されている。
なかおまさと●2005年中途入社。前職から人事一筋で、人事歴は今年で丸17年。スポーツ全般が好きだが、今は10歳、5歳、0歳の子供と過ごすのがオフの楽しみ。「寄ってきてくれているうちが花(笑)。最近は、水族館やいちご狩りにいきました」。